「障害者雇用納付金制度」とはどんな制度ですか?

障害者雇用納付金制度とはどんな制度?企業が知っておくべき義務と対策

障害者雇用に関する法律や制度の中でも、「障害者雇用納付金制度」は、企業の実務担当者や人事労務担当者からよく質問されるテーマです。特に法定雇用率を下回っている企業は、罰則があるのか、どのような対応が必要か不安に思うことも少なくありません。本記事では、この制度の仕組みから対象企業、納付金の金額、支援制度まで、分かりやすく解説します。

障害者雇用納付金制度の結論とは?

障害者雇用納付金制度とは、一定規模以上の企業に障害者の法定雇用率を義務づけ、その達成状況に応じて「納付金」または「調整金・報奨金」が発生する制度です。法定雇用率を満たしていない企業は、雇用していない障害者1人につき月額5万円の納付金を支払う必要があります。

制度の目的は、障害者の雇用促進を図るとともに、企業間の負担を公平にすることです。

制度の仕組みと対象企業

この制度は「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づいており、常時雇用する労働者が101人以上の事業主が対象です。

対象企業のうち、障害者を法定雇用率(2023年4月時点で2.3%)に満たない場合、不足人数に応じて「障害者雇用納付金」を支払います。一方で、法定雇用率を上回って障害者を雇用している企業には、一定条件のもと「調整金」または「報奨金」が支給されます。

具体例:
– 社員数200人の企業で、障害者の雇用者数が3人(法定雇用数4.6人)→ 不足1.6人 → 月額8万円(5万円×1.6)を納付
– 社員数300人の企業で、障害者を8人雇用(法定雇用数6.9人)→ 上回り → 調整金または報奨金を受給可能

よくある誤解とその真実

よくある誤解として、「障害者を1人も雇えなければ罰金が課される」「中小企業も対象になる」といった声があります。

実際には、納付金はあくまで「雇用義務を果たさなかった場合の経済的負担」であり、刑事罰とは異なります。また、従業員数が100人以下の企業は制度の対象外で、法定雇用率の努力義務はあるものの、納付金の支払い義務はありません。

さらに、納付金制度は「企業を罰する」ことが目的ではなく、「企業間の公平性の確保」と「障害者の雇用機会の拡大」を目的としています。

実務で注意すべきポイント

企業が障害者を雇用する際は、雇用管理、職場環境の整備、業務内容の調整など、実務的な配慮が求められます。

また、納付金の対象人数や金額は毎年報告する「障害者雇用状況報告書」に基づいて計算されるため、期限内の提出・正確な報告が重要です。虚偽報告や提出遅延があった場合、行政指導や企業イメージの低下を招くこともあります。

障害者を雇用した際には「特定求職者雇用開発助成金」などの雇用助成金も利用できるため、制度をトータルで把握しておくことがコスト管理にもつながります。

士業のサポート内容

社会保険労務士(社労士)や行政書士は、障害者雇用に関する制度設計や助成金申請、社内規定の整備、報告書の作成支援など、企業の実務を多角的にサポートできます。

特に、
– 法定雇用率の達成に向けたアドバイス
– 障害者雇用に伴う助成金の活用支援
– 障害者雇用状況報告書の作成代行
– 就労環境の整備に関するコンサルティング

といった支援が可能です。障害者雇用に初めて取り組む企業でも、士業のサポートにより制度を有効活用することができます。

まとめ:早めの対策と制度理解が鍵

障害者雇用納付金制度は、単なる「納付義務」ではなく、障害者の雇用機会を広げるための社会的な仕組みです。企業にとっては法令遵守だけでなく、社会的責任や企業イメージの向上にも関わる重要なテーマです。

自社が対象となるか、どのような対応が必要かを早めに確認し、必要に応じて専門家に相談することで、リスクを回避しつつ制度を活用することが可能です。
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