障害者雇用70万人突破の裏側にある「二極化」の真実―2026年法改正を前に企業が今すぐ始めるべきこと

1. 障害者雇用70万人突破、でも半数の企業が法定雇用率未達成という現実

厚生労働省が2025年12月に発表した「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」を、あなたはもうご覧になったでしょうか。

民間企業で働く障害者の数が、ついに**70万4,610人**に達し、22年連続で過去最高を更新しました。前年比で2万7,148人、率にして4.0%の増加です。

一見すると、日本の障害者雇用は順調に進んでいるように見えます。しかし、この数字の裏には、企業の人事担当者や経営者が直面している「深刻な課題」が隠れています。

・ 法定雇用率達成企業はわずか46%

実は、法定雇用率2.5%を達成している企業は、全体の46.0%。つまり、半数以上の企業が法定雇用率を達成できていないのが現状です。

さらに衝撃的なのは、未達成企業の57.3%が「障害者を1人も雇用していない」という事実です。これは約3万7,262社にのぼります。

つまり、障害者雇用に積極的に取り組み成果を上げている企業と、まだ手をつけられていない企業の「二極化」が進んでいるのです。

2. データから読み解く「二極化」―進む企業と進まない企業の違い

今回の調査結果を詳しく見ていくと、興味深い傾向が見えてきます。

・ 企業規模別の実雇用率格差

大企業(従業員1000人以上)の実雇用率:2.69%(法定雇用率クリア)
中小企業(従業員40〜1000人未満)の実雇用率:1.94%前後(法定雇用率未達成)

この数字が示すのは、大企業は専門部署や予算、ノウハウを持って障害者雇用を進められる一方で、中小企業はリソースや知識の不足から取り組みが遅れているという現実です。

・ 障害種別で見る雇用の変化

障害種別の内訳を見ると、以下のような特徴があります。

– 身体障害者:37万3,914.5人(前年比1.3%増)
– 知的障害者:16万2,153.5人(前年比2.8%増)
– 精神障害者:16万8,542.0人(前年比11.8%増)

特に注目すべきは、**精神障害者の雇用が11.8%増**と二桁の伸びを示していること。これは、企業が多様な障害特性に対応し始めている証拠でもあります。

3. 中小企業が直面する障害者雇用の3つの壁

私が日々、企業の経営者や人事担当者からご相談を受ける中で、特によく耳にするのが以下の3つの悩みです。

・ 壁①「どこから始めればいいか分からない」という知識の壁

障害者雇用促進法、合理的配慮、助成金制度、就労支援機関との連携……。初めて障害者雇用に取り組む企業にとって、覚えるべきことが多すぎて、何から手をつければいいのか分からなくなってしまいます。

・ 壁②「適切な業務が見つからない」という業務設計の壁

「うちの会社には障害者に任せられる仕事がない」という声をよく聞きます。しかし実際には、既存業務の一部を切り出したり、新たな業務を創出したりすることで、障害のある方が活躍できる場は必ず見つかります。

ただし、そのためには「業務の棚卸し」と「再設計」というステップが必要で、ここに専門的なノウハウが求められます。

・ 壁③「受け入れ体制に不安がある」という環境整備の壁

「既存社員の理解が得られるか」「どんな配慮が必要か」「トラブルが起きたらどうするか」――こうした不安が、最初の一歩を躊躇させる大きな要因になっています。

しかし、適切な準備と段階的なアプローチをとれば、これらの不安は解消できます。

4. 未達成企業の6割は「あと1人」―最初の一歩を踏み出すために

ここで、希望を持っていただきたいデータがあります。

法定雇用率未達成企業6万5,033社のうち、64%が「不足数0.5人または1人」という状態なんです。つまり、ほとんどの企業が「あと一歩」のところまで来ているのです。

・ 最初の一人を雇用するための5つのステップ

ステップ1:現状把握と目標設定
まずは自社の従業員数と、必要な障害者雇用数を正確に把握しましょう。法定雇用率2.5%の計算方法を理解することが第一歩です。

ステップ2:社内体制の整備
経営層の理解を得て、受け入れ部署と担当者を決定します。既存社員への説明会や勉強会を開くことも重要です。

ステップ3:業務の洗い出しと設計
既存業務の中から、障害のある方が担当できる業務を切り出します。「できない理由」ではなく「できる方法」を考える視点が大切です。

ステップ4:支援機関との連携
ハローワーク、就労支援機関、特別支援学校など、様々な支援機関があります。これらと連携することで、採用から定着まで伴走支援を受けられます。

ステップ5:採用と定着支援
採用後は、丁寧なオンボーディングと継続的なフォローが定着率を高めます。障害特性に応じた合理的配慮を提供しながら、徐々に業務範囲を広げていきます。

5. 2026年7月の法改正で何が変わる?今から準備すべき理由

実は、2026年7月にさらなる法改正が控えています。

・ 法定雇用率が2.7%に引き上げ

現行の2.5%から、2.7%に引き上げられることが決定しています。これにより、企業が雇用すべき障害者数がさらに増えることになります。

・ 対象企業の範囲拡大

現在は従業員40人以上の企業が対象ですが、法定雇用率の引き上げに伴い、従業員37.5人以上の企業が対象となります。

これまで「うちは対象外」と思っていた小規模企業も、障害者雇用の義務を負うことになるのです。

・ 今から準備を始めるべき3つの理由

理由①:採用活動には時間がかかる
障害者の採用市場は競争が激しく、希望する人材を見つけるまでに数ヶ月〜1年かかることも珍しくありません。

理由②:受け入れ体制の構築には準備期間が必要
社内の理解促進、業務設計、物理的な環境整備などには、相応の時間が必要です。

理由③:焦った採用はミスマッチを生む
直前になって慌てて採用すると、企業と障害者双方にとって不幸な結果を招きかねません。余裕を持った準備が、成功の鍵です。

6. 障害者雇用を成功させる5つのポイント

私がこれまで多くの企業をサポートしてきた経験から、障害者雇用を成功させるために特に重要なポイントをお伝えします。

ポイント①:トップのコミットメント

経営トップが障害者雇用を「会社の方針」として明確に示すことが、社内の意識を変える最大の要因です。

ポイント②:適切な業務のマッチング

「障害者にできる仕事」ではなく、「この人の強みを活かせる仕事」という視点で業務を設計することが、定着率を高めます。

 ポイント③:段階的なアプローチ

いきなり多数の障害者を雇用するのではなく、まず1〜2名から始めて、ノウハウを蓄積しながら拡大していくのが賢明です。

ポイント④:外部専門家の活用

社会保険労務士や就労支援機関など、専門家の知見を活用することで、試行錯誤の時間を大幅に短縮できます。

ポイント⑤:継続的なフォローアップ

採用して終わりではなく、定期的な面談や支援機関との連携を通じて、長期的に働き続けられる環境を整えることが重要です。

7. まとめ:障害者雇用は企業の「投資」であり「成長機会」

障害者雇用は、単なる「法律の義務」や「社会貢献」ではありません。

適切に進めた障害者雇用は、以下のような効果をもたらします。

✅ 多様な視点が組織に新しい気づきをもたらす
✅ 既存社員の意識変化と成長を促す
✅ 業務の見直しによる効率化
✅ 企業イメージの向上
✅ 優秀な人材の確保(採用競争力の強化)

実際、多くの経営者が「障害者雇用に取り組んでよかった」と感じる瞬間を、私は何度も目にしてきました。

2026年7月の法改正を前に、今こそ障害者雇用に向き合う絶好のタイミングです。

「どこから始めればいいか分からない」
「自社に合った進め方を知りたい」
「具体的な制度や助成金について相談したい」

そんな経営者や人事担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。御社の状況に合わせた、無理のない障害者雇用の進め方を、一緒に考えていきましょう。

障害者雇用は、企業の「投資」であり「成長機会」です。その最初の一歩を、私たちがサポートします。

【参考資料】
厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67490.html

動画も公開しています。
企業の「困った」を解決!障害者雇用サポート塾
https://youtube.com/channel/UC4CPSnfSxvaVCEA902K9gfQ?si=NCauCnBZAPc7U-Fh