「福祉は投資の対象外」の常識を塗り替えたVALT JAPAN——累計11億円調達が示す、障害者雇用を経営戦略に変える構造設計の力

福祉事業が「投資の対象」になった歴史的転換点

日経BPが報じたニュースが、障害者雇用業界に衝撃を与えています。

就労継続支援A型事業所などを運営するベンチャー企業VALT JAPANが、累計約11億円(最新ラウンドで3.6億円)の資金調達に成功しました。

記事では「福祉事業は長らく投資の対象外とされていた。その常識を塗り替えた」と評価されています。

この出来事が意味するのは、障害者雇用が「福祉」から「経営戦略」へ、そして「投資対象」へと進化したということです。

私が10年以上にわたり一貫して伝えてきたことが、ついに市場に認められた瞬間だと感じています。障害者雇用は、福祉ではありません。制度対応でもありません。経営戦略そのものです。

本記事では、VALT JAPANの資金調達成功の背景、投資家が評価したポイント、そして企業が障害者雇用を経営戦略に変えるために必要な構造設計を、私の経験と思想を交えて解説します。

📄 参考資料: [VALT JAPANプレスリリース](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000013618.html)

1. VALT JAPANが「投資の対象」になった3つの理由

・ 理由1:平均工賃200%増という具体的な経済的成果

VALT JAPANの「NEXT HERO」というプラットフォームは、就労困難者に仕事をマッチングするだけでなく、平均工賃を200%以上増加させ、従来の増加額の500%(3,000円/月→1.4万円/月)という成果を出しています。

これは、単なる福祉ではなく、経済的価値を生み出しているという証拠です。

私が現場で一貫して伝えているのは、「思想は実績によってのみ語る資格がある」ということです。抽象的な理念や善意ではなく、具体的な数字が人を動かし、投資家を動かすのです。

VALT JAPANは、取引社数累計370社、受注件数1,500件を突破、就労継続支援事業所のネットワークは累計2,000を超えています。この規模と実績が、投資家の信頼を獲得しました。

理由2:「インパクトモデル(循環型)」という持続可能な構造設計

投資家が評価したのは、VALT JAPANが構築した「インパクトモデル(循環型)」です。

BPOを通じた協働機会の創出、ワーカーのケイパビリティデータの蓄積、プロファイリング、そして企業への新たな価値創出——この循環が、持続可能なビジネスモデルを支えています。

私が重視するのは、「構造設計」です。人の善意や感情を前提にせず、構造と制度設計で安全と回復を担保する——これが、未来に耐える組織を作る唯一の方法です。

VALT JAPANは、まさにこの構造設計を実現しています。ワーカーのケイパビリティデータを蓄積し、それをプロファイリングして企業に提供する——このデータドリブンなアプローチが、投資家に評価されました。

・ 理由3:労働市場の構造改革という長期的ビジョン

VALT JAPANは、「就労困難者の大活躍時代をつくる」というビジョンを掲げています。

これは、単なる福祉支援ではなく、日本国内における労働人口減少問題の解決を目指すという、長期的かつ社会的なインパクトを持つビジョンです。

私が最も重視するのは、「未来耐久性」という視点です。今の合法性や空気感で判断するのではなく、10年後に耐える組織をどう設計するか。それが経営者の責任です。

VALT JAPANのビジョンは、まさに未来耐久性を持っています。2025〜2026年にはさらに約20億円の資金調達を計画しており、長期的な成長戦略を描いています。

2. 投資家が評価した「障害者雇用×ビジネスモデル」の本質

・ 三井住友海上キャピタル:「多くの方々を幸せにすることができる同社事業を支援できることを誇りに思っている」

三井住友海上キャピタルは、2021年5月に初回投資して以来、2022年6月および2023年12月に追加投資を行っています。

投資家コメントでは「VALT JAPAN社と小野CEOの経営理念を高く評価」「多くの方々を幸せにすることができる同社事業を支援できることを誇りに思っています」と述べています。

ここで重要なのは、投資家が「社会貢献」だけでなく、「経営理念」と「事業の持続可能性」を評価している点です。

私が一貫して伝えているのは、障害者雇用は「やらされている制度」ではなく、「経営戦略」だということです。投資家は、その可能性を見抜いたのです。

・ エムスリー:「AIの発展により障がい者が輝ける領域を見極め、実績を出されている」

エムスリーの投資家は「AIの発展により仕事が奪われると言われている中で、AIの発展により障がい者が輝ける領域を見極め、実績を出されているVALT JAPAN社は、労働市場にイノベーションを起こし牽引していくベンチャー企業である」と評価しています。

この視点が極めて重要です。AIは脅威ではなく、障害者の活躍を促進する手段です。

私が現場で伝えているのは、AIのリマインダー機能、文字起こし機能、文章書き換え機能などは、発達障害者の「苦手」をカバーし、「得意」を最大化するということです。VALT JAPANは、この可能性を具体的に実現しています。

・ 三菱地所:「就労困難者・企業双方の課題を解決するインフラ創出、誰もが活躍できるまちづくりの実現を目指す」

三菱地所のCVCファンド「BRICKS FUND TOKYO」は「企業と就労困難者の短期的なマッチングに止まらず、就労困難者が一般就労するところまで伴走支援できるよう様々なデータ蓄積やそれらを活用した就労支援サービス開発を通じて、社会に対して『新たな形での就労機会』を提示頂くことを期待しております」とコメントしています。

ここで重要なのは、「短期的なマッチング」ではなく「一般就労までの伴走支援」という長期視点です。

私が重視する「時間軸判断」と完全に一致します。今の同意・合法性・空気より、将来の持続性と回復可能性を優先する——これが経営者の責任です。

3. 「福祉」を「投資対象」に変える構造設計の本質

・ 構造設計1:BPOプラットフォームによる仕事の流通インフラ化

VALT JAPANの「NEXT HERO」は、単なるマッチングサービスではありません。BPOプラットフォームとして、企業の外注業務を受注し、全国の就労継続支援事業所に再委託するという構造を持っています。

これにより、就労困難者に「新たな仕事の流通」を創出しています。累計約400種類、1,500案件を超える業務を、障害のある方々へマッチングしてきました。

私が現場で一貫して伝えているのは、業務の可視化と標準化が重要だということです。VALT JAPANは、この業務を分解し、標準化し、就労困難者に適した形で再構成しています。

これは、構造設計の成果です。人の善意に頼るのではなく、仕組みで回す——これが、持続可能なビジネスモデルの本質です。

・ 構造設計2:ケイパビリティデータの蓄積とプロファイリング

VALT JAPANは、BPOを通じて蓄積されたワーカーのケイパビリティデータをプロファイリングし、AGENT事業(コンサル+人材紹介等)を通じて、企業へ新たな価値創出を実現しようとしています。

これは、データドリブンなアプローチです。「この人には何ができるか」を探すのではなく、「この業務にはどんな特性が必要か」を分解し、そこに人材を配置する——この構造設計が、戦力化の本質です。

私が支援してきた企業でも、業務を分解し、標準化し、適切な支援環境を整えることで、障害者が高度な業務を遂行できるようになった事例が数多くあります。

・ 構造設計3:「協働モデル」から「インパクトモデル(循環型)」への進化

VALT JAPANは、これまで「協働モデル」を構築してきましたが、今回の資金調達により「インパクトモデル(循環型)」への進化を加速させるとしています。

協働機会の創出→ケイパビリティデータの蓄積→プロファイリング→企業への価値提供→新たな協働機会の創出——この循環が、持続可能な成長を支えます。

私が重視するのは、「未来耐久性」です。短期的な称賛より、長期的に壊れない選択を取ることが責任です。VALT JAPANの「インパクトモデル(循環型)」は、まさに未来耐久性を持った構造設計です。

4. 2026年法定雇用率2.7%時代に問われる「投資としての障害者雇用」

・ 法定雇用率引き上げと「質の高い戦力となる雇用」への期待

VALT JAPANのプレスリリースでは「2024年以降の市場環境において、障害者雇用率制度『法定雇用率』は増加し続け、そのリードタイムは年々短縮されています。さらに単に法定雇⽤率を達成するのではなく、質の⾼い戦⼒となる雇⽤をつくりたいという、企業の純粋な思い(ダイバーシティ&インクルージョン、人的資本経営など)がマーケットにはあります」と指摘されています。

この指摘は極めて重要です。2026年7月には法定雇用率が2.7%へ引き上げられますが、企業が求めているのは人数合わせではなく、「質の高い戦力となる雇用」です。

私が一貫して伝えてきたことと完全に一致します。法定雇用率を満たすだけの障害者雇用は、長期的に見れば組織にとってリスクです。

・ 「投資」としての障害者雇用:コストではなくリターンを生む構造

VALT JAPANが投資家から累計11億円を調達できたのは、障害者雇用が「コスト」ではなく「投資」であることを証明したからです。

平均工賃200%増、従来の増加額の500%という成果は、経済的リターンを生み出しています。企業にとっては、BPOを通じた業務効率化、人的資本への貢献、障害者雇用率の達成というメリットがあります。

私が支援してきた企業でも、障害者雇用を投資として捉えた企業は、確実に成果を上げています。業務の可視化・標準化、職域開拓、マネジメント手法の蓄積——これらはすべて、組織の未来耐久性を高める投資です。

・ 「インクルーシブな働き方の選択」を社会全体に盛り込む

VALT JAPANは「ワーカー・企業との協働により、日本の経済構造にインクルーシブな働き方の選択を盛り込み、社会全体の底上げを目指しています」と述べています。

これは、単なる福祉支援ではなく、労働市場の構造改革です。私が重視する「構造設計」と完全に一致します。

人の善意や感情を前提にせず、構造と制度設計で安全と回復を担保する——VALT JAPANは、まさにこれを実現しています。

5. 実務担当者が今すぐ取り組むべき3つのアクション

・ アクション1:障害者雇用を「投資」として位置づける

まず取り組むべきは、障害者雇用を「コスト」ではなく「投資」として位置づけることです。

VALT JAPANの成功は、障害者雇用が経済的リターンを生み出すことを証明しました。投資家が評価したのは、ビジネスモデルのポテンシャル、持続可能性、そして労働市場へのインパクトです。

あなたの組織でも、障害者雇用を通じて業務の可視化・標準化が進み、組織全体の生産性が向上する可能性があります。

・ アクション2:業務のBPO化と外部プラットフォームの活用

VALT JAPANの「NEXT HERO」のようなBPOプラットフォームを活用することで、社内リソースをかけずに障害者雇用を進めることができます。

重要なのは、業務を分解し、標準化し、外部に委託できる形に整えることです。これは、障害者雇用だけでなく、組織全体の業務効率化にもつながります。

・ アクション3:データドリブンな人材マネジメントの導入

VALT JAPANがケイパビリティデータの蓄積とプロファイリングを行っているように、あなたの組織でも、業務と人材の特性をデータ化し、最適なマッチングを実現する仕組みを作ることが重要です。

「この人には何ができるか」ではなく「この業務にはどんな特性が必要か」を分解する——この視点が、戦力化の鍵です。

〇「福祉は投資の対象外」の常識を、あなたの組織でも塗り替える

VALT JAPANの累計11億円の資金調達成功は、「福祉は投資の対象外」という常識を塗り替えました。

私が一貫して伝えてきたことは、まさにこれです。障害者雇用を正しく設計できる会社だけが、これからの人材リスクに勝てる。

未来に耐える選択を、今、取るべきです。

人の善意や感情を前提にせず、構造と制度設計で安全と回復を担保する。短期的な称賛より、長期的に壊れない選択を取る。嫌われ役を引き受けることも、専門家の重要な機能である。

これが、私の思想であり、実践です。

VALT JAPANが投資家から評価されたのは、平均工賃200%増という具体的な成果、インパクトモデル(循環型)という持続可能な構造設計、そして労働市場の構造改革という長期的ビジョンです。

もし、あなたの組織が障害者雇用を本気で戦力化したいと考えているなら、まずは障害者雇用を「投資」として位置づけてください。そして、業務のBPO化と外部プラットフォームの活用、データドリブンな人材マネジメントの導入を進めてください。

未来は、今の選択で決まります。

📄 VALT JAPANプレスリリース:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000013618.html

【執筆者プロフィール】
若林 忠旨
社会保険労務士法人東京中央エルファロ – 社会保険労務士、障害者雇用戦略アドバイザー
人工透析患者として10年勤務した経験と、外部CHROとして経営者の視点を融合し、福祉でなく「経営戦略」としての障害者雇用を提案。制度と現場の”すき間”を埋め、戦力化を実現する仕組みづくりが得意。現場が前向きに受け入れる障害者雇用を実践的に支援中。

動画も公開しています。
企業の「困った」を解決!障害者雇用サポート塾
https://youtube.com/channel/UC4CPSnfSxvaVCEA902K9gfQ?si=NCauCnBZAPc7U-Fh