障害者雇用率15%超の企業に学ぶ成功の秘訣―「配慮する雇用」から「強みを活かす雇用」へのパラダイムシフト
1. 障害者雇用率トップ企業は法定雇用率の6倍!東洋経済ランキングから見える成功企業の姿
東洋経済オンラインが毎年発表している「障害者雇用率が高い企業ランキング」。2025年版では、驚くべき数字が並んでいます。
・ トップ3企業の雇用率
1位:フレアス
・雇用率:15.13%
・雇用人数:59人
・事業内容:訪問マッサージ
2位:ゼネラルパートナーズ
・雇用率:14.65%
・雇用人数:43人
・事業内容:障害者向け人材紹介・就労支援
3位:エフピコ
・雇用率:12.6%
・雇用人数:393人
・事業内容:食品容器製造
現在の法定雇用率は2.5%。トップ企業は、その**約6倍**の雇用率を実現しています。
・ ランキング上位企業に共通すること
このランキングを見て、私が最初に気づいたのは、上位企業には明確な共通点があるということです。
共通点①:障害を「弱み」ではなく「強み」として捉えている
共通点②:事業の中核に障害者を位置づけている
共通点③:障害特性と事業特性をマッチングさせている
つまり、成功企業は「障害者を配慮しながら雇用する」のではなく、「障害者の能力を戦力として活用する」という発想で雇用を進めているのです。
2. 1位フレアス(15.13%)に学ぶ「障害を強みに変える」事業モデル
フレアスは、訪問マッサージを事業の柱とする企業です。
・ 視覚障害者が企業の中核を担う
同社には、視覚障害を持つあん摩マッサージ指圧師が多数在籍しています。
注目すべきは、彼らが「配慮されるべき障害者」ではなく、「晴眼者と同等の収益を上げる専門家」として位置づけられていることです。
・ ライトサポーター制度という工夫
視覚障害者が訪問マッサージを行う際の最大の課題は「移動」です。
フレアスは、この課題を「ライトサポーター」と呼ばれる専任ドライバーとペアにすることで解決しています。
仕組み:
・視覚障害者の施術師1人に対し、専任ドライバー1人を配置
・ドライバーが送迎と訪問先の環境確認をサポート
・施術師は施術に専念できる
この仕組みにより、視覚障害者は安心して本来の専門性を発揮できます。
・ フレアスから学べること
①障害特性と事業特性を完全にマッチングさせている
あん摩マッサージ指圧師という専門資格を持つ視覚障害者にとって、この仕事は「配慮してもらう仕事」ではなく「専門性を活かせる仕事」です。
②合理的配慮を「コスト」ではなく「投資」と捉えている
ライトサポーターの配置は一見コストに見えますが、それにより施術師が最大のパフォーマンスを発揮できるなら、十分に投資に値します。
③障害者が「企業の顔」になっている
フレアスにとって、視覚障害者の施術師は単なる「雇用される側」ではなく、「サービスの中核を担う専門家」です。
3. 2位ゼネラルパートナーズ(14.65%)に学ぶ「障害者が管理職を務める」組織づくり
ゼネラルパートナーズは、障害者向けの人材紹介や求人情報サービスを提供する企業です。
・ ほぼ全部門で障害者が活躍
同社の特徴は、ほぼ全部門で障害のある方が活躍していることです。
・営業部門
・企画部門
・システム部門
・管理部門
・就労継続支援A型事業所「アスタネ」
特に注目すべきは、複数人の障害者が管理職を務めているという点です。
・ 就労継続支援A型事業所「アスタネ」
同社は、うつ症状・統合失調症のある方を中心に、菌床シイタケの生産・販売を行う就労継続支援A型事業所「アスタネ」を運営しています。
特徴:
・障害者が「働く場」を提供
・農業という安定した作業環境
・段階的なステップアップが可能
・ ゼネラルパートナーズから学べること
①障害者を「雇用される側」ではなく「経営を支える仲間」として位置づけている
管理職に障害者がいることで、真のインクルーシブな組織文化が生まれます。
②事業内容と障害者雇用が一体化している
障害者向けの人材紹介サービスを提供する企業だからこそ、自社での障害者雇用のノウハウが事業の強みになります。
③多様なキャリアパスを用意している
就労継続支援A型から一般就労へ、一般社員から管理職へ、というステップアップの道筋が明確です。
4. 3位エフピコ(12.6%)に学ぶ「特例子会社を活用した」大規模雇用
エフピコは、食品トレーや弁当・総菜容器の最大手メーカーです。
・ 全国20カ所で障害者雇用を展開
同社は、特例子会社エフピコダックスを中心に、全国20カ所の事業所で障害者に雇用の機会を提供しています。
事業内容:
・折箱容器の生産工場
・使用済み容器の選別工場(リサイクル事業)
・ 取引先企業のサポートも実施
エフピコの特徴は、自社の障害者雇用だけでなく、**取引先企業の障害者雇用のサポート**も行っていることです。
自社で蓄積したノウハウを他社にも提供することで、業界全体の障害者雇用を推進しています。
・ エフピコから学べること
①製造業でも十分に障害者雇用は可能
「製造業は危険だから無理」と思い込んでいる企業も多いですが、業務を切り出せば安全な作業は多数あります。
②特例子会社を活用した大規模雇用
特例子会社を設立することで、障害者に特化した職場環境を整え、効率的に雇用を進められます。
③リサイクル事業など、社会貢献と障害者雇用を両立
使用済み容器の選別という環境配慮型の事業に、障害者雇用を組み込むことで、多様な社会貢献を実現しています。
5. 成功企業に共通する5つの発想転換
ランキング上位企業を分析すると、共通する「発想転換」が見えてきます。
・ 発想転換①:「配慮」から「戦力化」へ
多くの企業が陥るのは、「障害者をどう配慮するか」という発想です。
成功企業は、**「障害者の能力をどう戦力化するか」**という発想で雇用を進めています。
・ 発想転換②:「障害特性」を「個性」として捉える
障害を「ハンディキャップ」として捉えるのではなく、「個性」や「特性」として捉える。
そうすることで、その特性に合った業務をマッチングできます。
例:
・集中力が高い → データ入力や精密作業に適している
・ルーティンが得意 → 決まった手順の作業に適している
・繊細な感性 → クリエイティブ業務に適している
・ 発想転換③:「義務」から「投資」へ
障害者雇用を「法律で決まっているから仕方なく」という義務として捉えるのではなく、「企業の成長につながる投資」として捉える。
そうすることで、前向きに取り組めます。
・ 発想転換④:「雇用される側」から「共に働く仲間」へ
障害者を「助けられる側」「支援される側」として見るのではなく、「共に企業を支える仲間」として見る。
この視点の転換が、真のインクルーシブな組織を作ります。
・ 発想転換⑤:「点」から「線」へ―キャリアパスの提供
「とりあえず雇用する」という「点」の発想ではなく、「成長とキャリアアップの道筋を用意する」という「線」の発想を持つ。
そうすることで、障害者のモチベーションが高まり、定着率が向上します。
6. 中小企業でも実践できる「強みを活かす障害者雇用」7つのステップ
「うちは大企業じゃないから無理」と思う必要はありません。中小企業でも実践できる方法があります。
ステップ①:自社の業務を徹底的に棚卸しする
まずは、既存の業務をすべて洗い出しましょう。
洗い出す項目:
・業務内容
・必要なスキル
・作業時間
・難易度
・危険度
ステップ②:切り出せる業務・創出できる業務を見つける
洗い出した業務の中から、以下の視点で業務を選定します。
選定の視点:
・複数の業務から一部を切り出せないか?
・新たに業務を創出できないか?
・外注していた業務を内製化できないか?
ステップ③:業務に必要な「能力」を定義する
「障害者にできる仕事」ではなく、「この業務に必要な能力は何か」を定義します。
例:
・データ入力業務 → 集中力、正確性、PC操作スキル
・軽作業 → 継続力、体力、手先の器用さ
・清掃業務 → 丁寧さ、決まった手順を守る力
ステップ④:能力に合った障害特性を理解する
次に、どの障害特性を持つ方が、その能力を発揮しやすいかを理解します。
障害特性と強み:
・知的障害 → 決まったルーティンをコツコツ続けられる
・精神障害 → 繊細な感性、クリエイティビティ
・身体障害 → 座位での作業、PCスキル
・発達障害 → 集中力、特定分野への深い知識
ステップ⑤:支援機関と連携して人材を探す
ハローワーク、就労移行支援事業所、特別支援学校などと連携し、適した人材を紹介してもらいます。
ステップ⑥:職場実習で相性を確認する
いきなり採用するのではなく、1〜2週間の職場実習を実施し、相性を確認します。
実習で確認すること:
・業務への適性
・職場環境との相性
・コミュニケーションの取り方
・必要な配慮の内容
ステップ⑦:採用後も継続的にフォローする
採用して終わりではありません。定期的な面談、支援機関との連携、業務内容の見直しなど、継続的なフォローが定着率を高めます。
7. 業種別・障害特性別マッチング事例集
具体的にどんな業種で、どんな障害特性の方が活躍できるのか、事例をご紹介します。
・ 製造業
適している障害特性:知的障害、身体障害
業務例:
・製品の検品・梱包
・部品の組み立て
・ラベル貼り
・軽作業全般
成功のポイント:
決まった手順を繰り返す作業が多いため、ルーティンが得意な方に適しています。
・ サービス業
適している障害特性:精神障害、発達障害
業務例:
・データ入力
・事務作業の補助
・清掃業務
・在庫管理
成功のポイント:
柔軟な勤務時間や在宅勤務など、働き方の選択肢を用意することで、精神障害のある方も安定して働けます。
・ IT・クリエイティブ業界
適している障害特性:発達障害、精神障害
業務例:
・プログラミング
・デザイン
・テスティング
・データ分析
成功のポイント:
特定分野への深い関心や集中力を持つ発達障害の方が、専門性を発揮できます。
・ 小売業
適している障害特性:知的障害、身体障害
業務例:
・商品陳列
・バックヤード作業
・清掃
・在庫整理
成功のポイント:
視覚的なマニュアルや、わかりやすい指示を工夫することで、知的障害のある方も活躍できます。
8. 2026年法定雇用率2.7%時代に向けて―今から準備すべきこと
2026年7月には、法定雇用率がさらに2.7%に引き上げられます。
・ 今と何が変わるのか
現在(2025年4月〜)
・法定雇用率:2.5%
・対象企業:従業員40人以上
2026年7月以降
・法定雇用率:2.7%
・対象企業:従業員37.5人以上
。 今から準備すべき3つのこと
①法定雇用率達成に必要な人数を計算する
2026年7月時点で何人の障害者雇用が必要になるか、今から計算しておきましょう。
②「数合わせ」ではなく「強みを活かす」雇用を設計する
法改正に焦って慌てて採用するのではなく、自社の事業特性に合った雇用を設計しましょう。
③今からノウハウを蓄積する
最初の一人を雇用し、ノウハウを蓄積することで、次の雇用がスムーズになります。
9. まとめ:「配慮」から「戦力化」へ―障害者雇用が企業の競争力を高める時代
東洋経済のランキング上位企業が教えてくれるのは、障害者雇用は「義務」ではなく「企業の強み」になり得るということです。
・ 障害者雇用がもたらす5つの効果
✅ 多様な視点が組織にイノベーションをもたらす
✅ 既存社員の成長を促す(教える力、配慮する力)
✅ 組織文化の変革―インクルーシブな風土が育つ
✅ 企業ブランドの向上―社会的評価が高まる
✅ 優秀な人材の確保―障害者の中にも高いスキルを持つ人材は多い
・ 発想を転換しよう
「障害者をどう配慮するか」ではなく、「障害者の能力をどう戦力化するか」。
この発想の転換が、障害者雇用を成功させる最大の鍵です。
・ 最初の一歩を踏み出そう
障害者雇用でお悩みの経営者、人事担当者の方、まずはお気軽にご相談ください。
御社の事業特性に合った、無理のない、そして前向きな障害者雇用の形を、一緒に見つけていきましょう。
ランキング上位企業のような高い雇用率を目指す必要はありません。でも、「一人ひとりの強みを活かす」という姿勢は、すべての企業が持つべきです。
障害者雇用は、企業の競争力を高める「人的資本への投資」です。その最初の一歩を、私たちがサポートします。
【参考資料】
東洋経済オンライン「「障害者雇用率」が高い企業ランキング」(2025年)
https://toyokeizai.net/articles/-/910100?display=b
動画も公開しています。
企業の「困った」を解決!障害者雇用サポート塾
https://youtube.com/channel/UC4CPSnfSxvaVCEA902K9gfQ?si=NCauCnBZAPc7U-Fh
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